“リアリティがない”
cocottのアルバム「TODAY-FOREVER-JUST A DAY」にはそんな印象がある。アルバム全編で展開されているメランコリックなメロディはまさに“北欧系ヴィンティージ・ポップ”というキャッチがぴったり当てはまる。特に印象に残ったのが、フレンチ・ポップを経由した雰囲気がバツグンの「DEAR MY LOVER」と、アシッド感覚溢れる「FEVER」。Saint Etienne等をフェイヴァリットに挙げる彼等ならではの持ち味に溢れているのがポイント。
もともとインディーズブランドのショーやイベントの音楽をプロデュースしていた北浦正尚(Key,g)があるイベントにヘアメイクアシスタントとして来ていた河口絵里香(Vo)の声質を気に入りユニット結成を持ちかけたところから始まる。「北浦さんの音楽はよくショーなんかで聴いていて、個性的で良いな、と思ってましたから」と河口はユニット結成を快諾。そこに神吉徹也(bass)が加わり現在のcocottが出来た。曲作りは殆ど北浦の自宅スタジオで行われるのだが、今回、そのスタジオでアルバム 「TODAY-FOREVER-JUST A DAY」について河口ち北浦の2人にインタビューしてみました。



1. OH BEAUTIFUL BOY!

アルバム1曲目を飾るナンバーですね。なんか、70年代ディスコ風ですごくカッコ良いですね。

北浦:「どっちかといえば、ディスコというよりもクラブを意識してみたんですよ。そうだな、最近流行っていたビックビート物をちょいアナログっぽく演ってみたかったんですよ。“ココット版ビックビート”という感じですね。」


2. MY DEAR

で、2曲目ですが、わりとギター中心のナンバーですよね。

北浦:「そうですね、実はちょっとライブを意識して作ってみたんですよ。普段、ピアノで曲を作るんですけど、この曲に関してはギターで作ってみたんです。」

歌詞は河口さんですよね。英語で作られてますけど、普段から意識することってあります?例えばこの曲とか....

河口:「うーん....。そうですねぇ....。割と映画に影響されることが多いかもしれませんねぇ。これは数年前に観たフランス映画....なんとかの麦っていうやつ?にインスパイアされて(笑)作ってみたんですよ。」


3. IT IS MY SECRET

一聴して思ったんですけど、メロがかなり北欧してますね。アルバム全体も、もちろんそうなんですけど特に、この曲ってメランコリックですよね。哀愁の泣きメロがポイントですかね?

北浦:「この曲はエリカさんの声質を最大限に活かそう!と作った曲なんですよ。最大のポイントはヴォーカルの浮游感!つなみにコード進行はE.サティの曲をヒントに考えてみました。」


4. TODAY-FOREVER-JUST A DAY

さて、アルバムタイトル曲です。ずいぶんと不思議なタイトルですよね。なんか刹那的というか.....

河口:「これはですね....。よく後味の悪い映画ってありますよねぇ....。なんか観終っても頭の中でクルクル回ってる....そんな感じをだそうとしてつけたタイトルです。」

具体的にインスパイアされたものがありそうですね。

河口:「歌詞の内容は、あの“ベルリン天使の詩”っていう映画の1作目が題材なんです。天使が人間に恋をするっていう....。映画はハッピーエンドで歌詞の内容もハッピーエンドなですけど(笑)。それじゃあんまりなんで、タイトルに刹那的なタイトルをつけちゃえと。ホントにハッピーだったの?って思えるような感じをだそうとしてつけたらメンバーにも大受けで。で、アルバムタイトルになったんですよ。」


5. DEAR MY LOVER

ミディアム・スローナンバーですが、割とcocottにはありそうでなかった感じですよね。

北浦:「そうですね。この曲は自宅でピアノを弾きながら歌って作りました。エリカさんがスローな曲を歌いたいって言ってたんで作ったんですよ。」


6. wounded moon

北欧系の王道ナンバーですよね。すごく切ないメロディとグルーヴィーな感じがすごく。

北浦:「この曲はテツヤ君がスタジオで何気に弾いていたベースラインが気に入りまして、そこから広げていった感じかな。」


7. FEVER

タイトル、キャッチーですね。

河口:「でしょ?(笑)ありがとうございます。」

アシッド感があるナンバーですよね。

北浦:「ウォーホールの映画みたいですかね(笑)なんて(笑)でも、もともとはサビもBメロもなくて、1コードで20分くらい同じことをするだけの曲だったんですけどね。」


8. CRY BABY CRY

シングルカットされるナンバーですね。北浦君のルーツが凄く感じられる曲だと思うのですが。

北浦:「そうですね....。その辺はでてきますよね。あと意識したのは、毒の強いシュールなものにしたかったんですよ。具体的に言うと....そうだな、ダリの作品に通じる世界観かなぁ。彼の“アンダルシアの犬”っていう作品とか、すごく独特な感じが好きで。」


最後にこれからの目標みたいなものを聞かせてください

河口:「音楽という枠にとらわれず、とりあえず自由な感覚っていうものを大切にしていきたいですね。」
北浦:「インディーズだろうとメジャーであろうと実験精神は忘れずにやっていきたいです。」


                (music freak magazine 1999.9.10号に掲載)